コラム
2020.12.28
弊社代表松原が会計人向けニュースメディア「KaikeiZine」にて連載をしているコラムを掲載しております。
私たち税理士法人ブラザシップは、毎月第二月曜日に行っている社内の月次経営会議を一般公開しています。実際に顧問先の社長を中心に、毎月たくさんの方々が見学にこられています。月次経営会議では、売上や利益も含めて開示しています。自社の経営会議を外部に見せる。これはなかなか勇気がいることですが、なぜそれに至ったのかについてお伝えしたいと思います。
私たちは財務をベースにしたコーチングによって、社長の思考を整理し、社長のマネジメント力を上げる事業を約10年に渡って行ってきました。社長のマネジメント力は上がり、実際にお客様の業績も上がっていきました。
しかしながら、社長から「幹部が育ってない。私の意図をくんで動いてくれない。経営会議でも意見が出ない」というお悩み相談をされることが増えてきました。私はベンチャーキャピタル時代から含めると、相当な数の会社の経営会議に参加してきましたが、確かに中小企業の経営会議が盛り上がっているという印象はあまりありません。社長が一人でずっと話している、もしくは他に話している人がいてもごく少数で偏っている。議論していた内容から脱線に脱線を繰り返して何の話をしていたっけ?と見失う。時間が延長してダラダラ続く、にもかかわらず何も決まらずに終わっていく。あれ?前回もこれ話さなかったっけ?と振り出しに戻る。時間通りに始まらない、そもそも会議があったりなかったりする、などなど。
会議は時間単価(給与)が高い人も含めて複数人の時間を拘束するものであり、時間単価×時間の総和を考えると相当な投資だといえます。にもかかわらず、会議の質が高くないのは大きな損失です。
そこで私たちは経営会議の活性化をしたいと考えました。私たちがご支援するのは、会議の中でも経営会議です。営業会議や品質会議ではありません。財務の専門家として、数字をベースにした経営会議であれば、普段社長と財務報告している面談の延長線上にあり、私たちが価値を提供できると思ったからです。
経営会議の支援を通じて、幹部の育成を図り、組織のポテンシャルを引き出す効果を出せるのではないかと考えました。
会議体の整理
現状どんな会議がいつ行われており、誰が出席しているか、どんな資料を使って何を話しているのかを確認していきます。当然会議は少なくすむに越したことはないし、参加人数も多くない方が効率的です。重複している情報はないか、参加者の目的は何か、足りていない議題はないか等を整理します。
グランドルールを決める
経営会議における守るべきルールを確認します。例えば、「全員参加の意識を持ち、主体的に建設的な意見を出し合う」、「否定的な意見はNG、肯定的な意見を意識する」、「前回の決定事項のチェックを確実に行う」などです。
アジェンダを事前に準備
議論すべき事項をピックアップし、誰が担当で話すのかを確認します。タイムスケジュールを決めて、どの議題にどれくらいの時間を使うかを決めておきます。人間が集中できる上限といわれている2時間以内に経営会議が終了するように優先順位をつけていきます。
ファシリテーション
経営会議のファシリテーターとなり、円滑な運営を支援します。ここでも私たちのコーチングの技術が活きます。意見を拾って深掘りする、拡散したものを集約する、脱線したものを戻す、決定事項をとりまとめる、次回以降の検討事項にまわす、誰がいつまでに何をするのかを明確にする、などです。最初は私たちがファシリテーターを務めますが、半年ぐらいで自社運営できるようにファシリテーターを育成していきます。
議事録作成
議事録の作成を支援し、決定事項についてPDCAサイクルの構築を支援します。
当然ですが経営会議が活性化します。規律が生まれてダラダラすることなく、発言者が増えて活発になります。アクションが明確になりその後のフォローもされていくので、業績が良くなります。そして社内コミュニケーションがとても良くなります。社長から幹部に伝えたかったこと、例えば理念やビジョン、具体的な指示の裏側にある想い等を第三者として通訳することができます。逆に幹部から社長に伝えたかったこと、例えば忙しすぎる社長に普段話せなかった本音、信頼して任せてほしいという想い等も通訳して伝えることができます。経営会議支援を通じて社内が一体となり、未来に向けて動き出す姿を見られるのは感動的です。このプロセスを通じて幹部が育っていきます。生涯続く会社経営の中で、これから何回も行われる経営会議が活性化すれば、相当な投資対効果になります。
経営会議支援で様々なご助言をしていくのですが、百聞は一見に如かず、見てもらった方が早いということで私たちの経営会議を見学していただいているのです。もちろん私たちが最高水準の会議をしているとはまだまだ言えません。毎月改善を行い試行錯誤しているところです。一方で見学者から、「お客さんになっている人が1人もいない」、「若手が積極的に発言しており、誰が発言しても建設的な意見が受け入れられている」、「動きが早い。すぐにto doレベルまで決めて実行している」などのご意見をいただいております。社長が見学された後、社員を順番に見学させていらっしゃる会社もあります。私たちとしても、外部の方に見られている緊張感があり、貴重なフィードバックをいただける効果も得られます。
数字は事実であり、事実に基づいた議論をする。客観的な視点で議論を整理する。事前準備と事後フォローのルールを決めていく。これらは会計事務所の強みを発揮できる領域です。そして、経営会議が活性化すれば、幹部も含めて現状を正しく把握でき、PDCAサイクルがまわることでお客様の組織力を引き出すことができるのです。
中小企業の経営会議支援が、未来の会計事務所の標準サービスになることを私は願っています。
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